2001年1月9日 その1

 毎朝早く起きなくては、と思うのだけれど目が覚めるともう10時。必ず一度は9時前に目が覚めるんだけどなぁ…。気持ちの良いベッドのせいで二度寝をしてしまう。日本にいた時不眠気味だったのが信じられない。
 今日はポルトガルの南と東の一番端っこにある町、Vila Real de Santo Antonio(長い名前…)に向かうつもり。ガイドブックには特に見所のない町とあるけれど、時間もあるし自分の目でそれを確かめたくなった。

 ホテルを出たのは11時過ぎ。雨が結構降っていたせいで、起きてからあまりきびきびと動く気になれなかった。幸い、だらだらと時間を過ごしたおかげ?で雨は傘をささずとも気にならない程小降りになってくれた。

 僕は早速バスターミナルに向かい、Santo Antonioへ向かうチケットを購入する事にした。片言のポルトガル語を話す僕に、チケット売り場のおじさんはバスのタイムテーブルを丁寧に紙に書いて何時のバスがあるか親切に教えてくれた。色々もたついていたと思うのに、嫌な顔一つせず本当に親切だと思う。旅の最中のこう言う心遣いはすごく助けになるし、その度その国の人間を好きになる。
 12時丁度のバスを選んで、チケットを買う。値段は405エスクード。日本円にして200円ちょっとのバス料金で50km程の距離を移動できてしまう。この国の物価の安さは本当に素晴らしい。時間さえあれば、驚く程少ない費用で長い旅ができる。
 バスを待つ間の時間が少しあったので僕は一旦町に戻り、サンドウィッチを買った。バケットを縦にざくっと切って、チーズと生ハム、トマトがはさんであるだけのシンプルなサンドウィッチ。ターミナルに戻って、それを頬張りながらぼんやりバスを待った。

 30分程で昨日乗ったのと同じバスがやって来た。僕は早速バスに乗り込み、
「Esse onibus vai para a Santo Antonio?」(Santo Antonio行きですか?)
と、ドライバーのおじさんに会話集で調べたばかりの言葉でたどたどしく訊ねると、
「Sim.」(そうだよ)
と、にっこりした笑顔で返してくれた。あぁ、もっともっとこの国の言葉がわかればなあ、と思う。ポルトガル人は、本当に暖かい。

 バスに揺られる事40分、僕は目的の町、Vila Real de Santo Antonioに着いた。バスターミナルはスペインとポルトガルをわけるグアディアナ川のすぐ側にあり、その隣にはスペインの町、アヤモンテ行きのフェリーが出てる発着場もある。向こう岸までの距離は100m程?対岸が違う国だなんて日本じゃ考えられない事だけど、ここでは一本の川を挟んで、言葉も文化も違う国になる。

 Santo Antonioの空は今にも落ちてきそうなほど重々しくて、晴れ間も少し覗いていたTaviraの町より機嫌が悪そうだ。ガイドブックに載っているこの町の情報はたった1ページ。地図さえ載っていない。インフォメーションに向かおうかと町の中心に向かうと、オラクルのある広場に出た。おそらくここが町の中心なのだろう。
 2001年になった時にカウントダウンのイベントでもあったのだろうか、2001、2000と書かれたネオンが広場を囲む建物に掲げてある。木製の古いメリーゴーラウンドもおいてあった。人通りはまばらだけど、小さな町の真ん中、といった感じがする。
 その後、辺りをぶらつき時間を潰した後は、広場に面しているカフェに入ることにした。空は機嫌を取り戻し、パティオにいる人も、少し眩しそう。
「Un café, por favor.」(コーヒーを一杯下さい)
簡単なポルトガル語は、さらっと言えるようにはなったから、一人でちょっとした優越感にひたったりもした。
こちらでコーヒーといえば出てくるのはエスプレッソで、値段は85エスクード。
僕は窓際に席をとってコーヒーを飲みほし、買っておいた絵葉書を1時間程かけて1枚書きあげた。