2001年1月8日 その1

たくさんの人が中学だか高校の屋上から中庭へいっせいに飛び降りて、自殺をする。それを扇動したのは僕の友達だと言う夢を見て目を覚ました。
そのせいであまり目覚めが良いとはいえない朝を迎えた。

午前は人骨堂のある教会に向かった。教会の部分はヨーロッパにあるそれと同じで割と典型的なものだが、120エスクード払ってそれより奥の部分に入ると、そこには、人の骨を使って建てた礼拝堂がある。中は12畳ほどの広さだろうか、礼拝堂としては小さい部類に入るはずなのだけど、妙な迫力がある。人骨堂の中は、少し外とは違う香りがした気がする。人骨の香り…?もしかしたら気のせいかもしれないけれど、少し気になった。

そう言えば、チェコにも同じような骨の教会があるらしい。

絵葉書で一度見たことがあったけれど、Faroのものよりも、グロテスクでおどろおどろしい骨で作ったシャンデリアがあった。信仰熱心な人が、死んだ後教会の一部になりたいと思うのはわからなくもないけど、見た目はあまり趣味が良いとはいえない。でも趣味の問題でもない。

ミュージアムとカテドラルは工事中みたいで中に入ることはできなかった。Faroはそんなに見所の多い所ではないから、一日二日の滞在で十分観光できる。この町はせかせか回る所ではなく、温暖な時期にビーチに出向くか、じっくりと腰を据えて景色や風を楽しむ場所だ。そういうのが苦手な人には、ただ退屈な町でしかありえない。この町で観光は二の次だ。

旅の予定はよく突然変わる。

もう一泊するはずだったホテルをキャンセルして、今はTavira行きのバスに乗っている。本当はFaroから日帰りツアーにするつもりだったのだけれど、列車がストライキで動かない。仕方なくバスを選んでそこへ向かうことにした。列車で行くなら30分ほどの距離だけど、バスだと1時間程かかるらしい。バスの便数や時間も良く分からないし、Taviraに行ったっきり、今日中に宿に戻って来れなくなってしまうかもしれない不安があった。

人骨堂の後、駅でストライキ(今日は月曜で水曜日まで続くらしい)のことを知って、バスターミナルへ。タイムテーブルによると出発は10分後だったので、慌ててホテルへ戻り、理由を話してチェックアウト。バスのチケットを買って本当に飛び乗るようにしてバスに乗り込んだ。それがさっきの話。

あてにしていた移動手段の一つがなくなるのだから、交通機関のストライキは僕みたいな旅行者にとっては本当に辛い。
しかし、FaroからTavilaまでのバスチケットは435エスクード。40km程の距離があるのに、日本だと考えられない安さだ。

バスに揺られること1時間と少し、僕はTaviraの町に着いた。途中バスの中から見えた景色は、どこか日本の田舎を思い出させた。道路沿いに広がる畑、少し向こうに見える低い山。鹿児島の離島とか、沖縄の方って確かこんな感じじゃなかったっけ。

この旅二つ目の町、Taviraはジラオン川が町を貫く人口1万人にも満たない小さな町。心持ちFaroよりも涼しい気がするのは、このジラオン川のせいだろうか。
ガイドブックに載っているホテル、ResidencialCasteloは、バスターミナルから歩いて5分とかからない。大通り ーといっても道幅は二車線程しかないのだけれどー 沿いなのですぐわかった。Faroで泊まったResidencialMadarenaと同様、入り口から二階に続く階段があり、登りきった所がレセプションになっている。こちらもシングルは一晩3000エスクードで、かなり手頃な値段といえる。

お金を払う前に部屋を見せてもらった。シングルはもうなかったのだろうか、今回も部屋はツインで、しかもかなり綺麗で清潔。今日はバス付きだし、部屋にテレビもある。電話もあるから、インターネットに接続も可能かもしれない。
「これで本当に3000なの?」
白髪頭のおじさんに英語でそう尋ねると、
「今は、部屋がこれしかあいてなくてね。不服かい?」
ニコリと笑いながらそんな答えが返ってきた。不服など勿論あるはずもなく、僕は今日と明日ここに宿泊することをその場で決めた。